初心者でも入り込める歌舞伎の世界。歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』を女子大生が観劇リポート!
- プロジェクト事務局 Scketto
- 4 日前
- 読了時間: 9分

東京・東銀座の街並みに溶け込みながらも、ひときわ堂々とした存在感を放つ「歌舞伎座」。

その豪華絢爛な劇場では、毎月歌舞伎が上演されています。

映画『国宝』のヒットも追い風となり、今あらためて注目を集める歌舞伎。

今回は女子大生リポーターの漆間虹美(左・東京藝術大学)、加藤美羽(右・早稲田大学)の2名が、実際に劇場へ足を運びました!

私たちが観劇したのは夜の部。演目は『女暫(おんなしばらく)』『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』、そして近松門左衛門作『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』の3作です。
指先の動きにまで神経が行き届いた所作、舞台と客席を包み込む音楽——そのすべてに引き込まれ、約4時間の上演時間が驚くほどあっという間に感じられました。さらに学生に嬉しいポイントが、25歳以下は当日券が半額になる「U25割」。初めての歌舞伎観劇にも、気軽に挑戦できる制度です。
【開演前】
劇場に一歩足を踏み入れると…

会場に入ると、まず目に飛び込んでくるのはお正月らしい華やかな装飾。思わず写真に収めたくなる光景が広がっています。

広々とした客席でひときわ存在感を放つのが、舞台の幕。黒・柿色・萌葱(もえぎ)色で構成されたこの幕は「定式幕(じょうしきまく)」と呼ばれ、歌舞伎を象徴するもののひとつです。客層はさまざま。年配の方や私たちと同世代の若い観客、外国人観光客など、歌舞伎が幅広い層に親しまれていることを実感しました!
【初心者にも心強い「イヤホンガイド」】
今回はイヤホンガイドも利用しました。

物語の背景や表現の意味、注目すべきポイントを丁寧に解説してくれるため、歌舞伎初心者でも物語に自然と入り込めます。「ここを知っていると、もっと面白い!」という発見が随所にあり、観劇体験がぐっと深まりました。
料金は800円。初めての方はもちろん、見どころ・聴きどころをしっかり押さえたい方にも、ぜひおすすめしたいサービスです。
【開演】
夜の部

一、女暫(おんなしばらく)
洒落た趣向の、豪奢な舞台
源平合戦の後、権勢を振るう蒲冠者範頼が催す宴で、窮地に立たされているのは、清水冠者義高。そこへ「暫(しばらく)」と響く声とともに現れたのは、巴御前で …。 歌舞伎十八番の一つ『暫』の主人公を女方に書き替えた、趣向に富んだ祝祭劇。勧善懲悪、個性豊かな登場人物たちにもご注目ください。
参照:歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/962
『女暫』(配役)
巴御前:中村七之助
舞台番:松本幸四郎
成田五郎:坂東亀蔵
猪俣平六:中村歌昇
轟坊震斎:坂東巳之助
女鯰若菜:坂東新悟
紅梅姫:市川笑也
手塚太郎:中村勘太郎
茶後見:市川寿猿
東条八郎:澤村精四郎
武蔵九郎:中村吉之丞
江田源三:大谷廣太郎
木曽太郎:中村松江
家老根井主膳:大谷桂三
局唐糸:大谷友右衛門
清水冠者義高:中村錦之助
蒲冠者範頼:中村芝翫
<感想>
「魅せる」場面と「笑い」の場面のバランスが絶妙で、冒頭から一気に歌舞伎の世界へ引き込まれました!煌びやかな衣装はどれも美しく、舞台のどこに目を向けても視界が華やぎます。中村七之助さん演じる巴御前が花道に登場し、舞台正面にいる登場人物たちと掛け合う場面もとても楽しく、客席全体が盛り上がっていました。観劇後には、思わず「しばらく」と口にしたくなります(笑)。江戸時代の美意識や楽しさが、ぎゅっと詰まった演目だと感じました。
二、『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』
古風で味わい深い舞踊劇
京の都から離れた、のどかな山中。山樵(やまがつ)姿に身を窶(やつ)した平家の武将・長田太郎が、見目麗しい白拍子と出会うと…。 山樵と白拍子の姿から一変する展開に、江戸の粋と風流を感じさせる、古風な味わいのひと幕。
参照:歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/962
『鬼次拍子舞』(配役)
山樵実は長田太郎:尾上松緑
白拍子実は松の前:中村萬壽
<感想>
幕が開くと同時に、舞台に広がる美しい紅葉の景色が目に飛び込んできました。舞台美術の移ろいや、その細やかな美しさも大きな見どころです。
この演目では、長唄と鳴物による音楽を存分に楽しめるのも魅力のひとつ。明確で歯切れのよい拍子が舞台全体を引き締めていて、その音楽と息を合わせながら、役者さんがひとつひとつの所作や繊細な表情で心情を表現していく姿がとても印象的です。派手な動きだけでなく、「止まる」「構える」といった静かな瞬間に生まれる緊張感にも引き込まれ、気づけばすっかり見入っていました!

三、近松門左衛門 作『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』
近松門左衛門が描いた、若者の狂気
天下泰平の世。大坂は天満、油屋河内屋の放蕩息子の与兵衛は、遊び惚けて借金三昧。遂に勘当の身となった与兵衛は、親切にしてくれた同じ油屋で豊嶋屋の女房お吉を頼りますが…。 近松門左衛門が実際に起きた事件をもとに描いた、世話物の傑作。刹那的な感情のままに行動する与兵衛の心の弱さを生々しく描き、衝撃的な殺しの場さえも美しさで魅せる歌舞伎の真骨頂をご堪能ください。
参照:歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/962
『女殺油地獄(近松門左衛門 作)』(配役)
河内屋与兵衛(Aプロ):松本幸四郎
河内屋与兵衛(Bプロ):中村隼人
豊嶋屋お吉(Aプロ):坂東新悟
豊嶋屋お吉(Bプロ):中村米吉
芸者小菊:市川笑也
妹おかち:澤村宗之助
刷毛の弥五郎:大谷廣太郎
皆朱の善兵衛:中村吉之丞
会津客郎九:澤村精四郎
母おさわ:中村梅花
口入小兵衛:片岡松之助
白稲荷法印:嵐橘三郎
山本森右衛門:松本錦吾
兄 太兵衛:市川高麗蔵
豊嶋屋七左衛門:中村錦之助
父 徳兵衛:中村歌六
小栗錦左衛門(A・Bプロ):中村東蔵
※Aプロ(1月2・4・6・8・11・13・15・17・21・23・25日)
※Bプロ(1月3・5・7・10・12・14・16・18・20・22・24日)
<感想>
今回、私たちはBプロを拝見しましたが、幕が開いた瞬間、そこに広がっていた重厚な油屋の舞台セットに息を呑みました。。江戸の生活感が細部まで再現された空間は、先ほどまでの華やかな演目とは対照的で、一気に物語のリアリティへと引き込まれます。
物語が進むにつれ、主人公・与兵衛が破滅へと堕ちていく姿は、象徴的な3つのシーンを通して鮮明に描き出されていました。最初は、放蕩の限りを尽くし、派手に遊び歩くシーン。その姿は、現代にも通じる「危うい若者」そのもので、その身勝手さの中にある孤独が強く印象に残りました。次に、「借金にも追われ、家族にも見放されていく過程」で彼の焦燥感は一気に加速します。一見すると手がつけられない不良のようですが、その裏にある寂しさや甘えも透けて見え、観ているこちらの胸も締め付けられるようでした。
そして最大の見どころである、あの凄惨な「殺しの場面」。舞台上に本物さながらの油が撒かれ、辺り一面がドロドロになる中、役者さんたちが足を取られ、滑り、もがきながら執念をぶつけ合う姿は圧巻でした。美しく整えられた「型」の美学だけでなく、なりふり構わず生に執着する人間の醜さが剥き出しになる演出に、これまでにない衝撃を受けました。一幕目の『女暫』で見せた様式美や祝祭感とは打って変わり、人間の弱さや身勝手さ、救いようのない孤独がこれでもかと描かれます。SNSなどで表面的な美しさに触れることが多い今の私たちだからこそ、この「割り切れない人間の本音」を突きつける物語は、時代を超えて深く心に刺さるものがありました。
【会場内紹介】
歌舞伎座の魅力は、舞台の上だけにとどまりません。演目の合間にある「幕間(まくあい)」や、終演後も楽しめる素晴らしい空間が広がっています。

まず外せないのが、3階で販売されている歌舞伎座名物「めでたい焼」です。

毎回の幕間で長蛇の列ができるほどの大人気で、その名の通り、中には紅白色の白玉が入ったなんともおめでたい一品。しっかりと食べ応えのある生地に、あんこが隅々までたっぷり詰まっていて、心もお腹も満たされる至福の味わいでした。

また、館内を歩けば美術館級の貴重な絵画が飾られており、待ち時間さえも贅沢に感じられる空間作りがなされています。
お土産選びも楽しみのひとつ。私は今回「歌舞伎座海苔チップス」と「歌舞伎稲荷神社の御朱印」をいただきました。

実はこの御朱印、東銀座駅直結の木挽町広場にあるお土産処「かおみせ」で購入できるんです。

チケットがなくても入れる場所なので、観劇の予定がない日でも、気軽に歌舞伎座の雰囲気を楽しむことができます。
他にも、趣向を凝らしたお弁当や歌舞伎座限定のグルメが数多く並んでいて、目移りしてしまうほど。舞台だけでなく、五感すべてで伝統文化を満喫できる、まさに「特別な日」にぴったりの場所でした。
<<今後の上演予定>>
『猿若祭二月大歌舞伎』
2026年2月1日(日)~26日(木)
≪昼の部≫
一、 お江戸みやげ(おえどみやげ)
二、 鳶奴(とんびやっこ)
三、 弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)
四、 積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
≪夜の部≫
一、一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)
ニ、雨乞狐(あまごいぎつね)
三、梅ごよみ(うめごよみ)

【今後のスケジュール】
『三月大歌舞伎』
2026年3月5日(木)~26日(木)
≪昼の部≫
通し狂言 加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)
≪夜の部≫
一、 壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)
二、 通し狂言 三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)

《チケット》
特等席 20,000円1等席 18,000円2等A席 15,000円2等B席 14,000円2等C席 9,000円3階A席 6,500円3階B席 5,000円1階桟敷席 20,000円
※25歳以下は当日チケット半額
【感想】

演者の方々の美しく洗練された所作と、芝居と見事に呼吸を合わせた音楽に魅了されました!これまで大学の講義で歌舞伎が取り上げられることも多く、以前から関心をもっていたので、今回の公演をとても楽しみにしていました。実際に生で観劇すると、その感動は想像以上のもので、ミリ単位の身体や表情の使い方で、役の繊細な心情を表現する技術には、ただ驚くばかりです。豪華な舞台装置や耳に心地よく響く音楽も含め、どの要素も本当に素晴らしいと感じました。学生の中には伝統芸能に少しハードルの高さを感じる方もいるかもしれませんが、思わず笑ってしまう場面も多く、肩肘張らずに楽しめる作品だと思います。お土産屋さんや売店も充実していて、幕間の休憩で食べた「めでたい焼」も特別な思い出になりました!ぜひフットワークを軽くして、実際に劇場に足を運び、生の歌舞伎を体感してみてください!(漆間虹美)https://x.com/komi__uruma


今回、初めて歌舞伎座を訪れて感じたのは、歌舞伎は遠い世界の古典ではなく、今を生きる私たちの心を揺さぶるエンターテイメントだということです。正直、行く前は「難しくてお堅い感じなのかな?」なんて思っていたのですが、実際に足を運んでみると、その先入観は良い意味で裏切られました。幕が開いた瞬間に惹き込まれる音楽や舞踊のライブ感、意外なほどにユーモアたっぷりに進んでいく物語。初心者でも十分に楽しむことができる、最高に刺激的な劇でした。幕間に食べた熱々の「めでたい焼」も、御朱印をいただいた時間も、すべてが大切な思い出です。舞台の上だけじゃなく、あの劇場の空気感まるごとが、今の私には最高に刺激的で、1度行くと抜け出せない魅力がありました。(加藤美羽)https://x.com/miu_kato_
文:漆間虹美(東京藝術大学)、加藤美羽(早稲田大学)
撮影:本人提供 ©松竹







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