三つ子の運命、三つの別れに感泣！野島健児・浪川大輔・仲村宗悟が紡ぐ壮大な歴史絵巻「こえかぶ　朗読で楽しむ歌舞伎～梅と松と桜～篇」公演オフィシャルレポート＆初日観覧感想

プロジェクト事務局 Scketto
8月13日
読了時間: 6分

3人の人気声優陣が朗読で魅せる歌舞伎の世界

2025年8月9日（土）から11日（月・祝）にかけて、三越劇場で開催される「こえかぶ　朗読で楽しむ歌舞伎～梅と松と桜～篇」。歌舞伎の名作を人気声優が現代語で朗読する本シリーズの第四弾として、歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑（すがわらでんじゅてならいかがみ）』が上演されました。9日の初日を務めたのは、声優の野島健児、浪川大輔、仲村宗悟の3名。宿命を背負った三兄弟、梅王丸・松王丸・桜丸を中心に、たった3人で24役を演じ分けるという、声のプロフェッショナルによる圧巻のステージが繰り広げられました。

初日観覧したリポーターは宮脇真子（東京藝術大学）、伊藤梨菜（慶應義塾大学）が担当しました。

＜＜初日公演＞＞

【登場人物が目まぐるしく入れ替わる、声の妙技】

「梅王丸！」「松王丸！」「桜丸！」の名乗りとともに、各役のテーマカラーで出演者が照明で染められ、幕開けの高揚感に客席の集中力が一気に高まったことが感じられました。

シーンは「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」「車引」「賀の祝」「天拝山」「寺子屋」と『菅原伝授手習鑑』の全段をほぼ網羅する形で構成され、その代表的な24役がわずか3名に配役されています。

野島・浪川・仲村はさすがの技量で巧みに声を使い分け三つ子の兄弟、父、妻、敵役、子供から老人まで、多岐にわたる人物をしっかりと演じ切りました。

第4場、車引（くるまびき）。梅王丸と桜丸の2人、そして松王丸と三つ巴の争いのシーン。2人と1人の3つ子同士の対立、そして別れに繋っていく重要な場面です。

【こだわり抜かれた舞台美術と演出】

本公演の舞台上には、美しい装飾が施された三越劇場にふさわしい幻想的な舞台美術が設えられました。中央に据えられた演台の背後には、梅、松、桜の意匠があしらわれたパネルがあり、バックライトで役柄やシーンの転換ごとに赤、緑、ピンク、青と照明が変化していき、場面の理解を深める一面もありました。

また歌舞伎ならではの演出「附け打ち」が物語に特別な緊迫感をもたらしました。歌舞伎の中でも格式のある演目として知られる「車引」。野島演じる熱血漢・梅王丸が、仲村演じる桜丸と共に、浪川が演じる敵方である藤原時平の牛車を破壊するシーンでは、梅王丸たちの勇ましい怒号に合わせ、附け打ちの「ばたばたっ」という効果音が鳴り響き、会場の空気は一気に張り詰めました。朗読劇と歌舞伎の伝統的な技術を組み合わせた、「こえかぶ」ならではの演出が光る場面でした。

【「こえかぶ」の裏話も！笑いに包まれたアフタートーク】

アフタートークの司会進行は、桜丸役の仲村。バラエティ番組でも共演したことのある3人。今回の朗読劇では、上下関係を感じる場面もあったがアフタートークでは終始笑いが絶えず、上下関係を超えた仲睦まじい様子を見せていた。

本編の感動の余韻が残る中、舞台上の3人は再び笑顔で登場し、アフタートークへ。

進行役を務める桜丸役の仲村を中心にクロストークが繰り広げられました。トーク冒頭、「このメンバーで三兄弟を演じることへの率直な感想」という仲村からの質問に対し、浪川は「最近暑いなと思って。劇場が寒かったらどうしようかなって。浴衣でいらっしゃっている方も沢山いるし」と質問とは大きくずれた回答。すかさず仲村が「全く違う話をしないでください！」とツッコミを入れると、早速会場は大きな笑いに包まれました。最終的には「いやいや、この三兄弟、夏のにおいがするなと思ったんだよ」と野島と浪川がフォローし、、三兄弟の末っ子役である仲村が、兄役の二人からいじられる形で和やかに始まりました。また、多くの観客が涙を流していたことにも触れ、「特に感情移入したシーンは？」という質問で、野島は子どもを亡くす母の役・千代を挙げ、「子供に“いい子にしてるんですよ”と言葉をかける場面がとてもつらかった。子供に言うべき言葉ではないよ……」と、その心情を深く語りました。浪川は、松王丸が全てを理解しながらも、運命に抗えない辛い場面に言及し、「現代の人が聞いたらショッキングな、すごい世界観」と、物語の重みを改めて噛み締めました。締めくくりの挨拶では、仲村はこれまで歌舞伎に触れてこなかった自身にとってこの朗読劇は大きな挑戦だったと振り返り、「複数の役を演じて、様々な感情を行き来して役者としても勉強になる時間だった。」と語りました。浪川は、リハーサルの時は歌舞伎という題材のハードルの高さを感じていたものの、3人で良い雰囲気で本番を迎えられた。お盆の初日にこの公演の観劇を選んで頂いたことへの感謝の気持ちをお客様へ述べられました。

【感想】

3人の声優さんが、メインの役だけでなく女性の役から子供の役まで演じられていて幅広い演技力に圧倒されました。私もお芝居に興味があるので、声色だけでなく喋り方もとても勉強になりました。また、ツケで声優さんたちの演技にあわせて、冠が落ちる音、騒ぐ声や刀を抜く音が表現されていました。大学の講義でツケについても教わったばかりだったので、その一場面を強調させる歌舞伎ならではの演出を体感でき、とても感動しました。物語は「別れ」がテーマになっていて、客席に涙ぐまれている方が沢山おられたのが印象的です。野島さんが一人二役で会話をされている際に、浪川さんと仲村さんがお互いの袴を整えていらっしゃる場面がありました。お芝居の中で素をみられた気がしてここもまた、生の舞台ならではの魅力だなと感じました。歌舞伎自体はまだ数回しか観劇したことがないので、これからたくさん観にいきたいと思います！（宮脇眞子）

声優陣が兼ね役という斬新な形式で、性別や年齢を超えた複数の役柄を巧みに演じ分ける姿に圧倒されました。朗読劇という限られた表現手段でありながら、登場人物たちの複雑な感情の機微や人間関係の深層までが鮮やかに浮かび上がり、まるで歌舞伎の舞台を見ているかのような臨場感を味わうことができました。特に、重厚なドラマ性とツケの音が調和し、日本の伝統芸能の奥深さが声で紡がれていく様子は圧巻でした。今回の公演は、声優という表現者の持つ無限の可能性と、伝統芸能の新たな魅力を再認識できた貴重な機会となりました。（伊藤梨菜）