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『TOHOシネマズ学生映画祭』リポート①受賞結果発表

更新日:4月4日

学生たちのアイデアと情熱が集う「TOHOシネマズ学生映画祭」が、今年で18回目を迎えた。映像制作を志す学生たちにスポットライトを当て、未来の映画界を盛り上げる新しい才能を発掘しようと、有志の大学生が中心となって作り上げてきたこの映画祭。

過去には『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督や、『やがて海へと届く』の中川龍太郎監督、『PUI PUI モルカー』の見里朝希監督など、いま注目のクリエイターたちもここから羽ばたいている。今年は、歴代最多となる291本もの応募が寄せられ、選び抜かれた19作品が「ショートフィルム部門」「ショートアニメーション部門」「プロモーション部門」「U-18期待枠」の4部門で、3月27日にTOHOシネマズ日比谷のスクリーンに映し出された。

半田莉里花(立教大学)、舟守はるな(早稲田大学)、鈴木遥(法政大学)の3名がリポートします

 

【結果発表】

大学2年・中村歌桜さんが実行委員長を努めた。

各部門の受賞をリポートしました。

【ショートフィルム部門】

20分以内の実写作品を対象とするショートフィルム部門のグランプリには扇子裕介監督(日本工学院専門学校)の「RESTART 御社を攻略せよ」が輝いた。

写真左から、プレゼンター:阪元裕吾(映画監督)、グランプリ:扇子裕介(日本工学院専門学校)


「RESTART 御社を攻略せよ」は、就職活動に対する熱意や苦悩を、要所に散りばめられたVFXと共にダイナミックに届けた作品。受賞者の扇子裕介さんは、「僕はVFXという映像表現を専攻していて、映画の作り方は1から全部独学で仲間と作ってきたので、今回このような賞をいただけて本当に光栄に思う」と喜びと感謝の気持ちを述べた。

 

<『参加作品』(監督名:学校名)>

ショートフィルム部門の上映作品は以下の6作品である。

『春が来た』(渡邉知弥:東放学園映画専門学校)

『聴覚人~LEGACY RIFT~』(飯島偲文:東京工芸大学)

『はなびのひ』(半田恭一:日本大学)

『RESTART 御社を攻略せよ』(扇子裕介:日本工学院専門学校)

『死んだ、ろか』(佐山美織:日本大学)

『縁切り屋』(須藤俊太:城西国際大学)


【ショートアニメーション部門】

20分以内のアニメーション作品を対象とする「ショートアニメーション部門」では、大野恭照監督(多摩美術大学)の『マミ子のウン子』がグランプリに輝いた。

写真左から、プレゼンター:久野遥子(アニメーション作家・映画監督)、グランプリ:大野恭照(多摩美術大学)、櫻井佳音

作品は、彼氏の浮気現場を目撃してしまった主人公・マミ子が、怒りの感情を爆発させ、怒りの“代弁者”を生み出す様子をユーモラスに描いたもの。授賞式では、大野監督が「素敵な音楽を作ってくださった櫻井佳音さんにお礼を言いたいです。彼女はお仕事募集中なので、ぜひ声をかけてください」と、制作に関わった仲間への感謝とともに会場の笑いを誘った。

 

<『参加作品』(監督名:学校名)>

ショートアニメーション部門の上映作品は以下の6作品である。

『腹鳴恐怖症』(小沼亜未:名古屋学芸大学大学院)

『マミ子のウン子』(大野恭照:多摩美術大学)

『Manual Complex』(万屋一心:武蔵野美術大学)

『鯨を夢む』 (村上修志:京都精華大学)

『ジョセリン・ラン・デブ』(マンモス計画:京都精華大学)

『小さきものもの』(多古シュウ:多摩美術大学)

 

【プロモーション部門】

「POP&COKE(Popcorn&Coca-Cola)」=「ポップコーンとコカ・コーラがあることにより映画館で観る映画が、より特別で楽しいものになる」をテーマに、この内容が伝わるような30秒~120秒のショートムービーを作成する。

グランプリには塚本奏監督(大正大学)が手掛けた「ここじゃない」が選ばれた。

写真左から、プレゼンター:森田慎一(日本コカ・コーラ株式会社マーケティング本部 IMX StudioX コンテンツプロデューサー)、グランプリ:塚本奏(大正大学)

この作品は、ポップコーンとコーラを持った男性がトイレや美容室、ジム、サウナ、畑などを巡りながらも「ここじゃない」とどこか違和感を感じており、最終的に映画館にたどり着き、その違和感を払拭するという演出になっている。受賞した塚本奏監督は、「まさかグランプリを頂けるとは思っていなかったのでとてもびっくりしている。(撮影に使用した)美容室や千葉県の農家の方など沢山の方が協力してくださったのでお礼を伝えたい」と喜びの気持ちを述べた。

 

<『参加作品』(監督名:学校名)>

プロモーション部門の上映作品は以下の6作品である。

『ポプ子、運命の出会い。』(ポプ子とその仲間たち:明治大学)

『仲直りの秘訣は… 』(Next Film:明治大学)

『映画のお供は ?Pop&Coke 』(大串碧躍:大正大学)

『映画という名の戦場-あるいはそれに赴』く戦士- (浅野実祈:日本工学院八王子専門学校)

『ここじゃない』(塚本奏:大正大学)

『ポップコークドリーム』(遠藤潤一ゼミ:金城学院大学)

 

GEMSTONE賞】

『GEMSTONE賞』にはマンモス計画監督(京都精華大学)の「ジョセリン・ラン・デブ」が選ばれた。

写真左から、プレゼンター:栢木琢也(東宝株式会社 エンタテイメントユニット開発チーム プロデューサー兼Gemstone Creative Label 統括)、マンモス計画のお二人(京都精華大学)


ジェムストーン賞とは、東宝株式会社が運営する挑戦的なコンテンツ制作レーベルのGemstone Creative Labelが選ぶ賞である。作品では、2人の男たちの人間臭さを表情豊かにアニメーションで表現。受賞者のマンモス計画さんは、「この賞をいただけると思っていなかったので、とても嬉しい」と感謝の気持ちを述べた。また、受賞者にはクリエイティブレーベルにて映像制作に携わる権利が与えられる。

 

【ROBOT賞】

写真左から、プレゼンター:村上公一(株式会社ROBOT)、受賞者:飯島偲文(東京工芸大学)

『ROBOT賞』は映像制作会社のROBOTが選ぶ賞で、全上映作品のなかから一作品に選ばれる。

受賞したのは、東京工芸大学の飯島偲文監督が手掛けた「超覚人~LEGACY RIFT~」。この作品は、かつて戦争のために生み出された、鋭い超感覚を持つ”超覚人”の生き残りである兄妹が政府の追跡者に狙われるというアクション映画になっている。飯島偲文監督は、「普段は1人や少人数で作品を作ることが多いが、今回は思いきってたくさんの素敵なスタッフに声を掛け、(完成した)作品を多くの人に見てもらえたことが嬉しい」と述べた。

 

【TOHO animation賞】

『TOHO Animation賞』は、ショートアニメーション作品の中から1作品に贈られる賞だ。

今年、『TOHO Animation賞』に輝いたのは、U-18期待枠として選出された南井洋人監督(聖徳学園高等学校)『MABU』である。

写真左から、プレゼンター:柳澤俊介(東宝株式会社TOHO animation プロデューサー)、受賞者:南井洋人(聖徳学園高等学校)

本作は、小人の世界を舞台に、外の世界を知らない少年MABUと、過保護な保護者赤鬼による一夜の旅の物語を描いている。U-18期待枠からの受賞ということもあり、会場はどよめきと拍手に包まれた。ステージに上がった南井監督は、「こんなにステキで、優美で、闊達な作品たちのなかで、僕の作品を選んでいただけて本当にうれしく思います」と感無量の面持ちで語った。

 

【講評】

各部門の受賞作品発表の後には、審査員による講評が行われた。

今年の審査員を務めたのは、映画監督の阪元裕吾氏をはじめ、株式会社ロボットのプロデューサー・村上公一氏、CMプランナーの佐藤雄介氏、日本コカ・コーラ株式会社の森田慎一氏、アニメーション作家で映画監督の久野遥子氏、東宝株式会社の栢木琢也氏と柳澤俊介氏の7名。それぞれの視点から、応募作品の魅力や今後への期待が語られた。

 


『GEMSTONEプロジェクト』について、栢木氏は「失敗してもいいから、若い才能をお持ちの方とこれまで観たことのない新しい作品を作っていきたいというプロジェクト」と、その趣旨を説明した。その上で、「GEMSTONE賞を贈った監督とは、これから一緒に作品を作っていくことになるからこそ『その人の人生を左右することになる。悩みながら、真剣に選んだ』」と力を込め、受賞者を選ぶにあたっての責任の重さと覚悟をにじませた。

 

今回、同賞を受賞した『ジョセリン・ラン・デブ』については、「観客を楽しませることを意識した作品」だと評価。「GEMSTONE賞はいずれ、全国の映画館で100万人以上のお客さんに観てもらえる作品を一緒に作りたいと思う人に贈るもの。『観客を意識しているか』ということを大切に選んだ」と選出理由を明かし、「ストーリーがしっかりと構築されていた」と付け加えながら、「『ジョセリン・ラン・デブ』を超えて、より多くのお客さんに届けられる作品を一緒に作っていけたら」と、今後の活躍に期待を寄せた。

続いて、「すばらしい作品をたくさん観せていただき、すごく刺激を受けた」と語ったのは、『ROBOT賞』の審査を担当した村上氏。「ロボットという会社はエンタメ作品を中心に作っています。『ROBOT賞』を『超覚人〜LEGACY RIFT〜』に捧げた理由は、エンタメに振り切っていたなと感じたことが大きな理由」と語り、作品のエンタメ性を高く評価した。また、「映画は集団で作るもので、決して一人の才能だけによるものではないです。監督もこれからいろいろなことを学び、いろいろな才能を使って、人を動かして作っていくことになると思う。彼のなかには、ものすごく自分の好きなものがあることを感じた。これが映画作りで一番大事なことだと思います。好きなことを周りのスタッフやキャストに伝えて、才能を引きだしていくというのが、僕らがいつもやっている映画の作り方」と、自身の経験を踏まえ、映画制作において大切なことを説いた。そして、「こういったことを続けていっていただけたら」と若きクリエイターにエールを送った。

『プロモーション部門』では、佐藤氏が総評を担当。

「気軽に観られること」がプロモーション映像のよさだとし、「気軽に観たものに対して、『ヤバい、なにこの映像。超カッコいい』というギャップが作れるとおもしろいと思う」と分析。その観点から、「グランプリの『ここじゃない』は一番変わったことをやろうとしていた。画のなかにギャップを作りながら、おもしろいことをやってやろうという気持ちが伝わった」と評価した。また、『映画という名の戦場ーあるいはそれに赴く戦士ー』については、「ベタな映像から入りつつ『構成力や、飽きさせない工夫があった』」とコメント。「プロモーション部門は、最初にテーマがあるというところがポイント。テーマが決まっている分、実験的な表現に全振りして作ってもらってもいいし、最後にテーマとなるポップコーンやコーラが出ていればOK。もっともっとおもしろいものを作って応募してもらえたら」と、今後の挑戦に期待を寄せた。また、森田氏は審査を振り返り、「ゼロからイチを生みだす力はすごいこと」と、学生たちの創造力に驚いたことを明かした。そして、「いまのマーケティングの考えは、映像や写真などの広告ではなくて、『体験なんだ』と言われています。皆さんの作品を観て、笑ったり、考えさせられたり、感情の動きもあった。映像も立派な体験だなと思いました。今後のマーケティングに活かしたい」と、学生たちの作品から得た新たな気づきを語った。

 

『アニメーション部門』では、『TOHO Animation賞』を担当した柳沢氏が、「世界中で愛していただけるアニメーション作品が増えている」と現在の状況に触れ、「まだ見たことのない表現に挑めるのが『アニメーションのおもしろいところ』」と魅力を語った。その上で受賞作『MABU』について、「完成度や技術もすばらしい。プラス、オリジナリティのある表現、演出が入っていた」と評価。「いろいろなものを観て、いろいろな表現があるんだと吸収してもらえるともっといいものになると思います」「全作品、すばらしいものばかり。それぞれの道でアニメーションがより豊かになるよう頑張っていただけたら」とクリエイターたちにメッセージを送った。

 

『ショートアニメーション部門』の審査にあたった久野監督は、自身の審査基準について「その人にしか持っていないもの、その人にしかないフェティッシュがあるものを評価したいと思った」と説明。その中で準グランプリに選ばれた『腹鳴恐怖症』について、「質感など、他の人と似ていないものを持っているなと思って選ばせていただいた」とし、グランプリ作品『マミ子のウン子』については、「すごくアッパーで笑ってしまった。食事のシーンは、見たことのないものだった。そういったフェチズムみたいなものを基準に選ばせていただきました」とコメントした。さらに自身の経験を振り返り、「私は学生のころに賞を取ってから、長編アニメーションを作るまでに10年以上かかってしまった。なかなか長編アニメーションを作る機会を得られず、チャンスをずっと探っていた」と明かし、「そのなかで仕事をしていくと、丸くなっていくというか。学生のころほど濃厚なものが作れなくなる。学生の時が一番、(表現を)尖らせることも、濃くすることもできる。それはその時にしかない時間。『こんなのやっていて意味があるのかな』『周りに笑われちゃうな』というものほど大切にしてほしい」と、後輩クリエイターたちに熱いメッセージを贈った。 

さらに、『ショートフィルム部門』では、『べイビーわるきゅーれ』シリーズなどで知られる阪元裕吾監督が講評を担当。「ショートフィルム部門」について、「観客を喜ばせるためには『“ワンダーとシンパシー”。驚愕させるか、共感させるか』が大事だ」と持論を語り、「台本、モチーフ、題材やストーリー、キャラクターなどいろいろな要素があると思いますが、『RESTART 御社を攻略せよ』は“ワンダーとシンパシー”をバランスよくまとめて描いていた」と、グランプリ作品を評価した。「特に“ワンダー”の部分では、SNS描写に最先端のものを感じた。すばらしいなと思った」と称えつつ、「“共感”の部分では、1回あげて落とすということをするならば、もっと落とさないといけないとも思った」と、さらなるブラッシュアップに向けた助言も加えた。

 

準グランプリ作品『死んだ、ろか。』については、「技術面、演出面で突出して『このシーンがすごい、これは見たことがない』と感じることはそこまでなかったんですが、一番、他人ごとじゃないものを描いている感覚があった。作品を自分ごとのように描けている。学生らしさ、ほとばしるパッションにやられました」と評価。その上で、「もうちょっと演出に工夫をしないと、時系列がわかりづらかったりする。(このシーンは)『誰かが死んだあとなんやな』と強調するために(映像を)白黒にするなど、そういった模索をしたらもっと人を引き込める作品になるのかなと思いました」と、改善の余地も示した。

 

そして阪元監督は、「『この顔を見ろ』というショットがあったこと」も両作品の評価ポイントとして挙げた上で、受賞を逃した作品も含め「こういった大きな場所で仲間たちと一緒に自分の作品を観られるというのは、かけがえのない時間」としみじみと語った。さらに「僕自身、大学の友達といまだに一緒に映画を作っています。『べイビーわるきゅーれ』のスタッフは、映画美学校の友達同士。実写の集団制作では、そういった出会いが一番大事だと思います。隣にいる人を見合って、手を繋いで、その人を大事にしながら。時にはぶつかり合ったりすることがありつつも、映画は人と人との芸術なので、ぜひ隣に人がいる喜びを噛み締めて帰ってください」と学生たちに呼びかけ、会場にはあたたかな拍手が響いた。

 

【MC】

漆間虹美(東京藝術大学)、光井江玲奈(早稲田大学)がMCを担当。

 

リポート②ではMC活動を紹介する

リポート②;MC紹介https://www.scketto.com/news/202504032

リポート③:「ナカモトユウ監督」トークショーhttps://www.scketto.com/news/20250403-1

  

【感想】

今回、初めてこの「TOHOシネマズ学生映画祭」に参加したのですが、どの作品も映像作品としてのクオリティーもストーリーのクオリティーもとても高く、感動しました。作品のジャンルはかなりバラバラで、同じ部門でもここまで雰囲気の異なる作品が出来上がるのかと、鑑賞していてとても楽しかったです!また、学生が運営しているということでしたが、その規模の大きさにも驚きました。来年もぜひ見に行きたいと思いました。鈴木遥(法政大学)

 

今回この映画祭を取材して、一番感じたのは「とにかくレベルが高い!」ということでした。私自身、映画やアニメなどの映像作品が大好きなので、どんな作品が集まっているのか楽しみにしていたのですが、プロ並みの完成度の作品が次から次に放映され、本当に驚かされました。舟守はるな(早稲田大学)

 

グランプリ、準グランプリ、各賞を受賞された皆様おめでとうございます。そして、ノミネートされた皆様も本当に素敵な作品をありがとうございました。このような映画祭に参加したのは初めてでしたが、自分と同年代の方が試行錯誤しながらゼロベースから作品を生み出している姿に尊敬の念を抱きました。映像制作の素人である私が言うのもおこがましいですが、それぞれの作品のクオリティがとても高く、また見たいと思う作品ばかりでした!今回の映画祭では2回の予備審査を経て開催されていますが、惜しくも最終審査に残らなかった方々の作品も多くの方に見ていただける機会があると嬉しいと思いました。これからの皆様のご活躍をお祈りしています。そして、映画祭実行委員の皆様も素敵な映画祭を開催してくださりありがとうございました。準備から当日運営の全てを学生がされていることに大変驚きました。私も機会があればこの映画祭に関わらせていただきたいと思える日でした。本当にお疲れ様でした!半田莉里花(立教大学) 


◆取材・文:鈴木遥(法政大学)、舟守はるな(早稲田大学)、半田莉里花(立教大学)

◆写真:公式提供、仲西一成(Scketto)


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