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佐久間宣行×蓮見翔、ショートドラマ『愛はスパイス』の制作秘話を明かす!「全部一本撮りで、めちゃくちゃ怒られた」

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テレビ東京で日曜の深夜24時45分から放送されている5分枠のショートドラマ『愛はスパイス』が、お笑い好きを中心に話題を呼んでいる。

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 同作は“飯”をテーマにした会話劇を、コントのようなテンポと切れ味で描く1話完結の短編コメディ。7月20日の放送開始以来、回を追うごとに注目度が高まっている。放送は全11話を予定しており、第7話までが放送済みだ。

 

 毎回、人気のお笑い芸人が登場するオムニバス形式の本作は、脚本を演劇ユニット「ダウ90000」主宰の蓮見翔が、そしてプロデューサーを“バラエティ界の鬼才”の異名をとる佐久間宣行氏が担当するという豪華な座組も話題となっている。 作品の内容に加えてユニークなのは、本編の放送後、公式YouTubeチャンネルにて「ディレクターズカット版」ともいえる、フル尺の動画が公開されること。地上波放送が3分半なのに対して、YouTube版の動画は4~6分と長めになっているのが特徴だ。


 このたび、残り4話となったタイミングで、蓮見と佐久間氏によるトークショー形式の取材会を開催。『愛はスパイス』制作の裏話をたっぷりと話してくれた。

終始リラックスした表情を見せた蓮見翔(左)と佐久間宣行氏
終始リラックスした表情を見せた蓮見翔(左)と佐久間宣行氏

 ◆大好きな芸人さん、先輩がたに向けた脚本を書きたかった

 佐久間氏によると本作は、テレビ東京でミニ枠の3分半が空き、「好きなことやっていい」「何やってもいい」と言われたことから、蓮見に「じゃあ脚本を書かない?」とお願いして実現したという。

 

 蓮見は「一話ごとに違うことをやりたい。今のショートドラマっぽいものよりも、ちょっとコメディみたいなのがやりたい」との希望を伝え、グルメをテーマにすることに決定。


出演者についても「大好きな芸人さん、先輩がたに書きたい」との思いから、人気の芸人を起用することになった。

 

蓮見「先輩に当てて書けることはなかなかない。自分たちがやれないことを先輩はできるので。やっぱ上手さとか、キャラクターの強さでやってもらえるので書きやすいんです」

 

 食やグルメをテーマに据えたことにも、明確な理由があったという。それは脚本を書いている途中で、このネタをライブでやりたいと思ったときに、「でもライブでご飯食べれないもんな」と諦めがつくからだとか。それもあって「先輩」に「ご飯を食べてもらう」とのコンセプトが固まったそうだ。

 

蓮見「舞台上でできないことを、テレビだとできる。美味しそうなものを食べていてほしいという希望を最初にお話させてもらった」

 

佐久間「そういう意味で言うと豪華ですよ。3分半なのにフードコーディネーターさんが入っている」

 

 ショートドラマとしては豪華すぎる作りについて、佐久間氏は「現場のスタッフが楽しんじゃってて」と説明。蓮見も「ご飯って美味しそうであればあるほど面白いので、ありがたかったです」と感謝の言葉を口にしていた。

 

 蓮見による脚本について佐久間氏は「3分半の枠なんですけど、蓮見さんの最初の初稿が、普通に考えたら7分」との裏話を披露。しかしリライトはお願いせず、「もう7分で録って、オンエアは1回3分半でやって、YouTubeでは7分」という方法をとっている。

 

佐久間「YouTubeには一応ディレクターズカットということで、全話フルで書いてある。しかもアーカイブが残るんですよ。なので半分以上が放送されたタイミングで取材を受けて、全話揃ったらもっとプロモーションしていく。なぜかというと、早い段階でプロモーションするとテレビ局に怒られるっていう(笑)」

佐久間宣行氏
佐久間宣行氏

 ◆放送版とYouTube版は「両方観たほうが面白い」

 制作にあたって蓮見が「スゴいな」と思ったのは、蓮見の書いた脚本を佐久間氏が1回も戻さなかったこと。脚本通りに制作すると3分半の尺では収まらないにも関わらず、すべて初稿で通したという。

 

 これに関して佐久間氏は「いや、通すって決めたから」とキッパリ。これには蓮見も「こんな有難いことないです。基本は何回も直してなのに、全部初稿です。こんな人いないです、マジで」と恐縮することしきりだった。

 

 初稿で通すと決めた理由について佐久間氏は「今回は蓮見くんが、先輩で(脚本を)書くのを見てみたいという企画だから、それを直すのもおかしいなって」と説明。もし出演芸人が「ここちょっとやりづらい」と言ったら直すつもりだったが、それも一切なかったという。

 

 ちなみに最も長い第6話(Aマッソ加納&ひょうろく)はYouTube版で6分49秒と、放送版のほぼ2倍という長尺となっている。

 

 そうなると放送版よりYouTube版を観たほうが面白いのかと言えば、佐久間氏は「両方観たほうが面白いと思う」と明言。蓮見も「先にテレビで観て、そのあとYouTubeで観ると、なんかもう一個知れたみたいな気分になると思うんで、それがめっちゃいいと思います」とのことで、やはり両方を観るのが吉のようだ。

 

 3分半という放送尺について蓮見は「30分ものを11話書くよりは荷が重くないので、そこはいけるかなと思ったんですけど、書いてみてやっぱ難しいです」との実感を口に。

 

 続けて、「自分で一応読むんですけど、そのジャッジが甘かったんでしょうね。自分で音読している時、すごく早口で読んで『よし、3分だ!』
と思ってオンエア観たら…… (笑)。舞台上のコントだと1ページ1分みたいな書き方ができるんですけど」と、ショートドラマならではの難しさを明かしていた。

 

蓮見「3分半だと起承転結に1分ずつ割けないのがめっちゃむずい。ドラマの縦軸を意識しながらコメディで、かつコンビのどちらにもある程度見せ場があって……みたいな要素を詰め込むだけで、もう3分を超えちゃう」

 

佐久間「これが完全にコントだと、入りの設定を飛ばせるんだよね」

 

蓮見「見てもらうとわかるんですけど、(物語の)途中から始まってたりするんで。結構すれすれです」


蓮見翔(ダウ90000)
蓮見翔(ダウ90000)

◆ショートドラマの潮流と全然違うものを残していきたい

 最近のショートドラマでは、タイトルに要素が詰め込まれており、「見た時点で内容がほぼわかってる状態のものが多い」(佐久間氏)。それに対して本作では「最後まで何も起きなくても、会話が面白いとか、やり取りを楽しんでもらえるものをどんどん残したい」との思いで制作しているという。

 

蓮見「ラノベとかの作戦じゃないですか、タイトルを先に言うみたいな。ショートドラマでも最初の波として流行ったけど、(本作は)3分だったら3分喋っているみたいな。これがどんどん流行っていくと、ショートドラマも面白い可能性あるっていう」

 

佐久間「テンポが早くて裏切らなきゃいけないショートドラマの潮流と、全然違うものをさざ波として残してきたい」

 

蓮見「そして賞レースでは絶対にやらないネタ、精進料理みたいな。『スパイス』とか言っといて(笑)」

 

 制作に際しては最初に出演する芸人を決め、その芸人に対して蓮見が脚本を当て書きするスタイルを採っている。

 

蓮見「3分半の枠で先輩の芸人さんに新たな領域にチャレンジしてもらうようなおこがましいことはできないので。普段やっていることを存分に(やってもらう)。当て書きってラブレター的なとこありますよね。『あなたたちのこういうとこ好きなんですけど、どうですかね』って提示してるみたいな感じです。それが結構楽しくて好きですね」

 

佐久間「まず(蓮見に)誰に書きたいかを訊いて、スケジュールの合う合わないはあるけど、『この人に蓮見くんのネタやってほしいよね』っていう芸人はみんな、引き受けてくれた感じかな」

 

蓮見「けっこう全員引き受けてくださいました。こんな有難いこと、なかなかないですよね」

 

佐久間「ただ(テレ東の)制作にめちゃくちゃ怒られたのは、みんなスケジュールがバラバラだから『全部1本録りなんだけど』って言ったこと。『ふざけんな』ってすごい怒られた(笑)」

 

蓮見「普通は『2日で全部録ります』みたいなことありますよね」

お互いに信頼しあっている様子が伝わってきた
お互いに信頼しあっている様子が伝わってきた

◆Aマッソ加納&ひょうろくの回は「めっちゃ怖かったです」

 放送済みの回に出演した芸人は「アルコ&ピース 平子祐希」「タイムマシーン3号」「錦鯉」「ラブレターズ」「ラランド」「Aマッソ加納&ひょうろく」「きしたかの」の7組。

 

 基本的にコンビ芸人ばかりだが、佐久間氏によると「男女コンビがラランドしかいなくて、もう1組男女を書きたいなって話になったんだけどなかなか見つからなくて。それで『じゃあ“加納とひょうろく”っていう変わり種のコンビを入れますか』となった」という。

 

 その加納とひょうろくが出演した第6話に関して蓮見は「ほんとに難しかったです」と吐露。「脚本、めっちゃ遅かったじゃないですか。ほんとに思いつかなくて。やっぱ資料、映像がないから」と、初物コンビに当て書きする難しさを明かしていた。実際、加納とひょうろくは今回の撮影が初対面だったという。

 

蓮見「加納さんに台本書く怖さとかあります。独自の言い回しがある人だから、『こんなこと言わないけどな』と思いながら言わせていたらやだなと、めっちゃ怖かったです」

 

 なお第1話はアルコ&ピースから平子のみが出演。それについて相方の酒井健太は「あれ? ほか全部コンビじゃね?」と言っていたのだとか。その点について佐久間氏は「平子はちょっと特別な出方をするから、ドラマっぽいやりとりじゃないからって、すげえ謝りました」と苦笑いだ。

 

 その第1話は他の回と少し毛色が異なり、同じテレビ東京の『孤独のグルメ』っぽさを感じさせる作風になっている。

 

 その点について蓮見は「第1話で取っかかりというか『これからどうなるんだろうな』みたいなのを作ろうと思ったのと、こういうドラマですっていう説明しなきゃいけないなか、プラスでコメディの要素を入れるっていうのがちょっと難しかったので、元ネタがあるものを入れました」と、その狙いを明かしていた。

包み隠さず脚本執筆の裏側を明かしてくれた蓮見翔
包み隠さず脚本執筆の裏側を明かしてくれた蓮見翔

◆びっくりしたのは、きしたかのがコント上手い

 放送済みの回で、とくに印象に残っている回について問われた蓮見は「ラブレターズさんの餃子のやつ」(第4話)と即答。

 

 蓮見自身、ラブレターズの単独ライブにて毎年ネタを書いており、それもあってか「ラブレターズさんだけ異常に読解力があって、ほんと完璧だったんで、すげえ笑っちゃいました」という。

 

 佐久間氏は「ひょうろくと加納のやつ」(第6話)を挙げた。二人の雰囲気に関して「違うマンガの主人公同士、違う先生が描いたキャラクターみたいなヤツなのに、すごくいい感じになって」と、二人のマッチングの良さを指摘。そのうえで「今後も1年に1回あってほしいって思いました。すごく良かったです」との期待感を口にしていた。

 

 その第6話に関して蓮見は「自分で見返して、なんか初期のコントに似ててちょっと嬉しかった。自分が最初のほうに書いてたやつ」と、自身が主宰するダウ90000のコントと比較。ダウ90000のファンは必見の回かもしれない。

 

 また佐久間氏は「びっくりしたのは、きしたかの(第7話)がまあまあコント上手い」と指摘。蓮見も「岸さんめっちゃうまかったですよね。元々コントですからね、きしたかのさん」と応じていた。

 

 一方で「一番現場でテンパって『できねえ』って言ってたのがタイムマシーン3号(第2話)」とも暴露。「緊張するって言ってて、間違えたらなんか悪いしって。真面目だからさ、後輩の脚本を間違えるわけにはいかないって」と、撮影の様子を明かす。

 

 すると蓮見は「めっちゃ書きやすかったです、タイムマシーンさん」とフォロー。ツッコミがあんなにはっきりしているコンビ、ないから」とのことだ。

時には表情豊かにトークを展開していた佐久間宣行氏
時には表情豊かにトークを展開していた佐久間宣行氏

◆なんで引き受けてくれたんだ、って人が最後に出てくれる

 放送は残すところ、あと4話。佐久間氏によると「かが屋」や「春とヒコーキ」の出演が決まっているという。もし第2弾を作る場合には「パンプキンポテトフライで、仲直りする2人の話書いてほしい」という。

 

 熱心な視聴者のなかには、ネット上で考察を披露したり、今後の展開を予想する声もあるようだ。

 

 これまでの放送では毎回、最後のところに女性の声で食に関するナレーションが入っている。それについて佐久間氏は「伏線だと考えている人もいると思うんですけど、そういうことではなくて。最後のほうに、その出てくる人がちょっと……ってぐらい」というヒントを提示。果たしてあのナレーションは誰の声なのか、予想してみる楽しみもありそうだ。

 

 一方では「なんでこの枠でこの尺なのに引き受けてくれたんだ、って人が最後に出てくれるんだけど」との情報も。蓮見も「嬉しかったです。えー! って思いました」という人物のようだ。

 

 しかも「無理でしょと思っていたら、まさか(オファーが)するっと通りました」そうで、佐久間氏は「本人が企画を勘違いしてる可能性もある」と煙に巻いていた。

二人からは22歳差を感じさせない信頼関係が伝わってきた
二人からは22歳差を感じさせない信頼関係が伝わってきた

【INFO】

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◆『愛はスパイス』SNS

・公式YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/@love_is_spices


◆佐久間宣行 公式Xhttps://x.com/nobrock

◆蓮見翔 公式Xhttps://x.com/Show0408S


取材:須田真輝絵(上智大学)、渡辺梨子(東京女子大学) 



 
 
 

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